通信販売JAPAN history
第1章 明治・大正期の通信販売-2
2009/10/19

■成功者たちの通販事業心得
明治の企業家たちが培った通信販売事業の心得をご紹介しましょう。
・誠心誠意を基本とする
・美麗なカタログを作る
・誇張した広告をしない
・顧客本位のコピーを書く
・顧客の信用を得ること
・分類したカタログを制作する
・男女対応の区別をする
・都会と地方への対応の差
・知力と経験と信用が大切
・前金制を撤廃する
・迅速な対応をする
・返品を自由とする
だそうです。

どう感じられますか?信用を得ることを第一に考えるとともに、現代のダイレクト・マーケティングで必要な、データマーケティングやフルフィルメント、またエリアマーケティングやパーソナルコミュニケーションについても言及しています。

驚くのは、このときすでに前金制の撤廃と返品の自由を謳っていることです。1990年代にランズエンドが日本に上陸したとき、いつでもどんな理由でも返品自由というコピーに衝撃を受けたものですが、明治の終わりに当時の企業家たちはすでに謳っていたのです。言い換えれば、それはCSが一番大切ということです。

Lansend_2

■当時の通販への視線
しかしまた、明治43年に、東京高等商業学校の石川文吾教授が「通販が日本で成立しない理由」として以下の5つを挙げていますから、それもご紹介します。
①村と都会の距離感
日本の国土は狭くて人口過密なので、少し歩けば日用品の買い物に不便はない。そのため、通信販売を利用して都会から取り寄せる必要はない。
②商品に対する信用程度の相違
米国ではカタログと実物が違うのはあり得ないことになっているが、日本の消費者は商人をそれほど信用していない。
③カタログ印刷の困難
日本の印刷は、技術が幼稚で実物の色彩を見ることはできないし価格も高い。
④郵便制度の不完全
米国では郵便制度が遺憾なく発達しているが日本では未発達。米国のように小包、為替、カタログが安心して迅速に、そして安価で届けることができない。
⑤日本語圏の範囲が狭い
英語のように広い地域に言葉が通用しない。
この石川教授の意見を精査すると、現在では解決しているインフラもあるし、できるようになった技術や当時とは異なる人々のライフスタイルもあります。
①の村と都会の距離感については、ただ商品が買えれば良いという生活ではなくなり、消費者はより便利なもの、よりセンスの良いものを求めています。また逆に産地直送のように美味しいものや本物への志向が強まりました。
②の商品に対する信用程度の相違は、まだ一部に悪徳業者はいるでしょうが、法的規制の強化や通信販売協会など業界団体の努力で排除される傾向にあります。
③④については、印刷技術は進歩して世界最高水準となりその価格も安くなっています。ただ、郵便料金は諸外国に比べると相変わらず高いままで、最大の通信販売発展の阻害要因ですが、宅配便などの台頭などにより状況はかなり改善されています。
つまり、⑤を除いては日本も通販に適した状況になっているわけです。
しかし、この⑤は石川教授の意見がアメリカのカタログ通販の成功との比較から発想しているからであり、日本の市場だけでも充分大きいと考えられる現在では、的を射ていない指摘だと思います。

次回は、商材別に見た企業方針や成功例を中心にお話しします。