小さな会社・小さなお店が儲ける法
最強のワントゥワンコミュニケーションは家族的な関係
2010/01/21

【2010年1月21日更新】

●引っ越しの次の日から「ご用聞き」に来た酒屋さん
勝手口から酒屋さんの声が聞こえる。「三河屋でーす。何かご用はありませんかぁ?」。お母さんが「今日は結構です」と応えると「またお願いしまーす」と帰って行った。
今、こんな光景はほとんど見られなくなった。マンガ「サザエさん」でも酒屋の三平君は、1985年に郷里の山形県に帰って行ったそうだから、日本中探してもすでにいないのかも知れない。
しかし、昭和50年代までは、町内にはご用聞きがたくさんいた。毎日使う味噌や醤油などを扱う酒屋さんが多かったが、クリーニング屋さんも2日に一度ぐらいは「何かありませんか」と勝手口に顔を出していた。

こうしたご用聞き担当者は、配達業務もあるから毎日町内を回っている。そして、引っ越しを見つけると手伝いをかって出て、翌日からご用聞きに回るのである。しかし、別にご用聞きをするために引っ越しの手伝いをする感じではなかった。自然にこうした付き合いが成立する時代でもあったのだろう。

Goyoukiki

●日本人に刷り込まれている「損して得取れ」の美学
考えてみると、富山の薬売りというのも、すごいシステムである。使わなかったら無料、何か困ったときだけ使ってもらい、半年とか一年に一度確認と集金に来るのである。完全に人間の正直さに依存しているビジネスモデルであり、今でもBtoBでは残っている。
中東などから訪日した人が驚くのが道路脇で売っている朝取りの野菜だそうだ。雨露をしのげる程度のバラックの無人店舗に無造作に野菜が並べられており、買う人は誰が見ているわけではないのに脇に置かれた箱にお金を入れてその分の野菜を持っていく。こういう正直さは、日本人の心に刷り込まれているものである(最近はやや不安も?)。

DMGが得意とする単品通販は、こうした「損して得取れ」の気持が生きているビジネスである。最初にモニターとかお試しキャンペーンなどで商品を提供し、試用して気に入っていただけたら固定客になってもらうというものが多い。それまでの業種・業態によっては、当初赤字になるケースもあるが、次第に黒字転化して安定的に利益を重ねていく経営デザインになっている。

●売りたい気持ちが見えるとすべてがウソになる
ここ数年、急増したのがセルフ給油のガソリンスタンドである。以前はガソリンを入れに行くと、水抜き剤だの何だのさまざまな商品を売りつけられて辟易したものだ。そういうやり方に消費者が反感を持っていると気づいたスタンドや石油元売り会社が、海外で主流になっているセルフ給油方式を導入した。
セルフ給油なので給油機ごとに人員を配する必要がないから、人件費を抑えることができ、その分ガソリン価格も多少低めに設定できる。そのためもあって、セルフ店の燃料売上げは伸びているようだ。

しかし、実際には人員は思ったよりも削減されてはいない。セルフ給油の先進国・アメリカだと店員はキャッシャーにいるだけだが、日本では給油施設内にも目を光らせている人員を配置している。実際、くわえタバコでガソリンを入れようとする婦人を見たことがある。気を配っていないと危険なことも多いのである。

そこで、結局今もガソリンスタンドでは、燃料以外のものをどう売るかが課題になっている。そして、教育されているのが「売ろうとしないマーケティング」だ。
「売ろうとしないマーケティング」とは、お客様と親密なコミュニケーションを形成することを目的にし、不信感を持たれないように気を使う接客方法である。例えば、洗車を頼まれたら最終チェックは必ずお客様にしていただき、チェック表にサインをもらう。エアチェックをしたら、タイヤについての知識を提供しながら、一緒にタイヤの状態を確認するといった具合で、給油している間のサービスを通じて少しずつコミュニケーションを深めていく。

ここで肝心なことは、決してその場で色々なものを売りつけようとしないことである。洗車を頼む人はスタンドに来てから決めるのではなく、ほとんどが来る前に決めているという。だから、スタンド内で洗車を勧誘しても無駄だし、押し売りされたと感じられたら次回の給油は他のガソリンスタンドに行ってしまう。
かといって、何もしないのでは結局売上げ増にはつながらない。ここに最大のジレンマがある。これを解決するのが家族的な信頼関係の構築である。

例えば、あなたは家族が乗っている車のタイヤが磨り減っているのを発見し、危険だなぁと思ったら、交換した方がいいよと言うはずである。アドバイスしないことの方が不親切と言える。だから、スタンドの店員としても、本当に危険なことはきちん指摘し、よく説明して交換するように勧めなければいけない。ただし、「タイヤが磨り減っていて危険なので、私どもの店でなくても結構ですから、早めに交換されるといいですよ」とお勧めする。この「私どもの店でなくても結構ですから」によって、お客様の信頼を勝ち取ることができるのだ。

お客様に家族のように信頼していただける関係を築くことを目標にしているのが「家族的関係構築マーケティング」である。家族同然だった磯野家と三平さんのような関係を築きましょう。

●心のないマニュアルサービスから気配り接客へ
友人たちに頼まれて一人でハンバーガーショップに行き、可愛い女子高生アルバイトに5個のハンバーガーと5杯のドリンクを注文した。すると、「店内でお召し上がりですか?」と尋ねられたことがある。大食い大会でもなければ、そんな客はいない。あまりにもマニュアル通りの対応で、言葉は発していても人と人のコミュニケーションをとろうとする気持が感じられない。

それとは逆に、あるハンバーガーショップでは、人手不足から高齢者を採用した。ハンバーガーショップといえば若い女の子のアルバイト先というイメージがあるから、何か違和感を感じていた客たちだったが、あるときハンバーガーだけを注文した客に「お冷やをどうぞ」とお水を持ってきてくれた。このそっと思いやる姿勢こそが家族的であり、それを実践するのが「家族的関係構築マーケティング」である。

そして、このマニュアルを越えた気配り接客は感動を生み、お客様からお客様へと口コミで伝わって、このハンバーガーショップは、モスジーバーと呼ばれて人気店になっているそうだ。
最初にも述べたように、今必要なのは「商品+感動パック」。商品は様々な方法で揃えられるが、感動は家族的な関係を構築しようとする心の中にある。

次回は、「お客様の価値観を知り、お客様の価値を高める」ことを考えます。